王国に朝の陽光が差し込み、空気が静かに満ちる中、ひな姫の麗しき日課がそっと始まりました。
それは、御身の美しさを保つために日々欠かすことのない「御毛繕い」のお時間でございます。
この日、姫がお選びになったのは、白き御壁と柔らかき敷物が心地よく調和した、静かな一角。
周囲に誰の気配もないのを確かめると、姫はすっと腰をおろされ、ふさふさの御腹を正面に構え、ついっと舌を運ばれました。
ひな姫は元より、極めて几帳面にして綺麗好きなお方。
御毛繕いにかける情熱は並々ならぬもので、朝・昼・夜と、そのときどきの気分に応じて、入念なお手入れをなさいます。
ことに本日のお手入れは、長毛種ならではの豊かな毛並みを美しく整える、たいへんご丁寧なものでございました。
舌先で毛並みを丁寧に整えられる姿は、まさに「日常に宿る高貴」。
胸元の白絹のような飾り毛、腰まわりのこがね色と焦茶のグラデーション、そして威風堂々たる尻尾までもが、姫の手により次第に艶を取り戻してゆくさまは、まるで芸術の域。
何かに気を取られることもなく、淡々と御身を整え続けるその集中力には、思わず目を見張るばかりでございました。
やがて、ひとしきりのお手入れを終えられたひな姫は、ふと顔を上げ、こちらに目を留められました。
そのお姿には、何とも言えぬ気品と気高さが漂っており──
まるで、「美しさとは、日々の積み重ねにこそ宿るもの」と仰っているかのようでございました。
民の皆様。
ひな姫のように、自らの在り方を律し、美しさを日々の所作の中に見出すことができる方こそ、真の意味で高貴なお方でございます。
そしてそのような姫が、今日も我らの王国で穏やかな時を紡いでおられること、これほどの誇りが他にありましょうか。
この日常のひと幕こそ、もふもふ王国の豊かさの証であり、姫の優雅な生き様を物語る小さな奇跡にございます。
──忠実なる執事より