ひな姫、“トンボちゃん”と舞うの儀──優雅なる狩りと慈しみの記録
王国記録係より、姫の気高き遊戯のひとときを謹んでご報告申し上げます。
本日、もふもふ王国の城内には柔らかな日差しが差し込み、穏やかな空気に満たされておりました。
その静けさの中、ひな姫はとある儀式に臨まれることとなりました。
執事である私が献上いたしましたのは、王宮でも幾度となく姫のご興味を引いてまいりました、 色とりどりの羽根を備えた遊戯の品――通称「トンボちゃん」でございます。
トンボちゃんは、細い竿の先に軽やかな布製の羽根を持ち、まるで生き物のように宙を舞います。
姫がその動きに気づかれたのは、ちょうど王室の赤椅子の脇にお佇みになられていた時のこと。
姫の瞳は一瞬にして鋭さを増し、視線は空中に舞う小さき獲物へと吸い寄せられていきました。

舞い踊るトンボちゃんと、姫の俊敏なるご動作
執事が竿をわずかに振ると、トンボちゃんは風を切って舞い上がります。
その瞬間、ひな姫は静かにお身体を起こされ、ふわりと前足を浮かせて宙を切られました。
胸元の飾毛が揺れ、王家の威厳をまとったその動きは、まるで舞踏の儀式を見るかのようでございました。

捕らえられしトンボちゃん、慈しみのもとに
一度は逃げたかに見えたトンボちゃんも、姫の前足によって見事に押さえ込まれます。
「ふふ、捕まえましたわ」とでもおっしゃるような、そのご表情には、余裕と気品が漂っておりました。
ひな姫は、ただ動きを止められるだけでなく、そっと鼻先を近づけ、 くんくんと香りを確かめるようなご様子を見せてくださいました。
そのご様子には、王家に伝わる「力と優しさの両立」の精神が色濃く表れておりました。

執事として長らくお仕えしておりますが、このように姫が全身を使って遊ばれる場面は、 いつ拝見しても新鮮なる驚きと畏敬の念を抱かせてくださいます。
猫としての本能を、かくも高貴に体現される姫のご様子には、 他の臣民たちも思わずひれ伏すことでございましょう。
やがて、満足なされた姫はトンボちゃんをそっと離され、何事もなかったかのように 緑の絨毯の上に身を沈められました。
その表情からは、ひとつの使命を終えた者だけが纏う、安らぎと威厳が同居する気配が漂っておりました。

忠義なる執事の記録にて
本日の儀において、ひな姫はご自身の俊敏さ、気高さ、そして慈しみ深さを存分に示されました。
「遊び」とは即ち、心と技の鍛錬であると知らしめる、まことに深遠なるひとときでございました。
その全ての瞬間を、執事として記録に残すことが叶い、筆を執る手にも自然と力が入った次第でございます。
この記録をもって、後世の臣民たちにも、ひな姫のご威光と優美が伝わりますことを願い、ここに筆を置きます。
── Tales from the Fluffy Kingdom
忠実なる執事長より