王国の朝は、柔らかき陽光に包まれて始まりました。
この日は、あられ姫のご希望により、普段はなかなか足を踏み入れぬ外地へのお出かけとなりました。新調されたばかりのピンクのリードが、姫のたおやかな被毛と見事な調和を見せ、民の目にも愛らしさこの上ないお姿でございました。
姫は、石畳の続く街の風景を眺めつつ、時折、地を踏みしめる足取りにも軽やかさがあり、終始ご機嫌麗しゅうございました。お散歩の間、執事は常に姫のお傍に控え、リードを手に、姫の進む先へと従い続けましたが、時折こちらを見上げて微笑まれるそのお姿に、ただただ心和むばかりでございます。

しばし歩を進めた後、姫は木陰の休憩処にてご休憩の後、一品のもてなしをお受けになりました。それは王国近郊にて供されている「姫用の特別料理」。あくまで健康と味わいを兼ね備えた、選ばれし民のみが口にできる逸品でございます。
お皿に乗ったその一片を目にした瞬間、姫の瞳は期待と歓喜に輝き、その御鼻を近づけて香りを確かめられたご様子──そして、まさに風の如く、たちまち召し上がられました。執事が皿を持ち上げたその瞬間から、一口も残すことなく綺麗にお召し上がりになるまで、姫は目を輝かせながら集中されており、その美味しさと満足感はまぎれもなく、御心を満たすものであったに違いありません。

この日、執事は思いました──
あられ姫の嬉しそうなお姿、笑顔で見上げられるその瞬間のひとつひとつが、何よりの幸せであると。王宮の内外を問わず、姫とともに在る時間こそが、執事としての務めの喜びであると、深く胸に刻んだ次第でございます。
帰路に着かれる頃には、姫は満ち足りたご様子で再び石畳を歩まれ、時折立ち止まりながら風の香りを楽しまれておりました。新しきリードを誇らしげにたなびかせ、すべての景色が姫の背景として輝くように見えたこと、これは執事の主観に過ぎぬものではございましょう。
この麗しき日を、王国の一幕としてここに記し奉ります。
──忠実なる執事より